タネ取り地獄でございました

今週ぶじにブドウのジャムを煮終えました。
「べリーA」っていう品種よ。
「べリーA」は「べリー」×「マスカット・ハンブルグ」というブドウを交配して1940年に発表されたものだそう。ずぅ〜っと「べリーA」って呼んでいたけど、本名は「マスカット・べリーA」だっていうのを、調べてみて知ったわ。
へえ〜、「べリー」も「マスカット・ハンブルグ」も、どっちも知らない品種ね。ご存知ですか?
ブドウの品種って日本にあるだけでも30〜40種類もあるんですって。その中でワタシが食べたことのある品種は10種類あるか、ないかだわ。
と、書いてる途中で数えてみたら意外と15、6種類あったわ〜。
さすがジャム屋だわね、我ながら。




さて本名「マスカット・べリーA」ですが、”マスカット”だなんて付いてるとグリーンのブドウを想像しちゃうでしょう?
違うの、実際は黒に近い紫色なのよ。
召上がったことあるかしら?
最近ではタネ無しが多くらくに食べられるようになってるブドウですもん、タネのたっぷり入った「マスカット・べリーA」は敬遠されるかしらね。探せばタネ無しもあるそうだけど、ワタシは見たことないわ。

ワタシが子供のころ父親が借りていた畑の持ち主がブドウと梨を栽培する農家さんで、父親の畑の隣りにブドウ棚が広がって、なっていたのは「べリーA」だったわ。
季節になると妹と棚の下を追いかけっこしながらブドウの房からつまみ食いしたりして。ちゃんと有料のブドウ狩りもしたわね。母親は贈答用にどこかへ送ったりしていたのを覚えてる。
最近の大粒で美しいキング・オブ・フルーツてな堂々とした様子のブドウに比べて、濃い紫色の果皮に白く粉っぽいブルームを起こして田舎町の青年て素朴な感じの「べリーA」は、こどもの頃からの付合いからか愛着のある品種だわ。
味も、タネに気を取られがちだけど濃厚な甘みに適度な酸味があっておいしいのよ。




ジャム屋になってお付合いしているブドウ農家さんから、今まで送ってくださっていた数種類のブドウの木を切ってしまったというお手紙が来たのは夏のことだったの。
ガーーーーン…。
今後の仕入れに響くわ〜っていうこともあるけど、直接連絡をとり合っていた奥さんは詳しく聞いた訳じゃないけどもブドウ作りをしたくてブドウ農家へ嫁いだってくらいのブドウ(作り)好きだそうだから、ずいぶんなご決心だったと想像するわ。
電話をしてみると家庭の事情があってのことだそうで、それでもいくつかワイン用のブドウの木は残しているということで、赤ワインの原料にもなる「べリーA」も残ってたの。
それなら「べリーA」だけはい今まで通り送っていただくことにしたのよ。
「べリーA」はもう1軒の山梨の農家さんからも送ってもらっているブドウだったから、他のブドウがない代わりにたくさんの「べリーA」が今年は届くことになったってわけね。
それが総量なんと17kg。
今までで一番多い「べリーA」の山よ。

届いちゃった後で、目を背けたくなるのに気持ちを奮い立たせてむかったわ。
そう、タネ取り地獄の始まりなんですものー!
タネ取りのないほかの果物なら10〜15kgはこなすけど、ブドウは1日に5kg前後しかワタシ1人では処理出来ないわ。
え!?怠けてるんじゃないかですって!?
そりゃ、そうかもしれないけど、意外とジャム作りだって疲労するのよ。だから1日がむしゃらに動いちゃうと次の日使い物にならなくなっちゃうんだから、ペース配分も必要なの。




まずは房ごとジャブジャブ洗うでしょ。
そんで房からひと粒ひと粒を取っていくでしょ。
そんでつぶれやゴミをよけながら洗ってザルにあげるでしょ。
ここからですよ、タネ取りが始まるのは。

最近は延々と続く単純作業のときにはタイマーをかけて臨むことにしてるのよ。10分間ね。
10分のあいだにどれくらいの成果か確認したら、次はもう少し!その次はまたもう少し!って記録を更新してくつもりでね。
必ずやってくる睡魔にはブドウを2、3粒口に放り込めば良いわ。
ブドウ=ブドウ糖。
これぞエネルギー源てな感じで、ブドウ糖が脳みそに直撃して目を覚まさしてくれるの。ネット検索したらブドウ糖は「脳の活動を維持する為に、絶対に欠かせない唯一のエネルギー栄養素」ってあったもの。
実感するわよ。その即効性ったら驚くわ。
みなさん、疲れたときはブドウですよ、ブドウ。

そうやって作業を続けてって、まだ手をつけてない方のザルの底が見えてくると「もうひとふんばり〜!」「もうひとふんばりよ〜!」って、また自分を鼓舞してね。
あ〜あ、な〜んて孤独な作業なのかしら。
ここまで、タネを取り終えて煮るまでの作業に4〜5時間かかるとね煮るのはもうパラダイスよ〜。生の味から、ギュッギュッ、ギュッギュと味わいが変わっていきますからね。おもしろい。
はっきりとした濃い紫色も見ていて嬉しいわ。
そして確実におししいの。
なんてったって、ブドウですから。




毎年同じことの繰り返しで、「べリーA」に向かうときは自分を動かすのに気合いがいるのよ。この秋もちゃんと「べリーA」が終わってホッとしたわ。
それに今年はいままでとちょっと違う(気がする)の。

むか〜し、こどもの頃に家で食べたクロスグリのジャムの味わいが忘れられなくて、その後はそのクロスグリのジャムほどおいしいスグリジャムには出会えないんだけど、だけど実家がブドウ農家の友人が作る「べリーA」のジャムがそのクロスグリに似て、同じくらいおいしかったのね。
「べリーA」のジャムを作り始めてから毎年彼女のジャムを思いながら煮るけど、今年はレシピを少し変えてみて、ちょっとだけ近づけたように思うのよ。







プロフィール

 
宇佐美エバ亜希子
うさみエバあきこ
ジャム職人
埼玉県上尾市出身
季節を追った国産果物や野菜のジャムを作ります。 エバジャムを召し上がれ!

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