農家さん訪ねて②

さて、行って参りました神奈川県は小田原市へ。

なんて、いつの”さて”だ!?と思われる方がいらっしゃることでしょう。
今はすでに6月。小田原市を訪れたのは4月の半ばのことですから、今までどれだけサボってきたのでしょう、この「フル〜ツ・デイズ」を…。
いえ、ジャム屋的フル〜ツ・デイズは日々いとなまれてはいるんですけど。ですけど…。

えっと、あまりに間を置きすぎてなんのことか分からない方が多いでしょうね。
えっと、小田原へはエバジャムのジャムの材料となる果物をいろいろ送って下さるジョイファーム小田原さんを訪ねるために出掛けたの。
もう7年くらいお付き合いのある仕入れ先で、ずっと担当してもらっているアリサカさんに誘われて農地を視察してみようってわけです。
前回のマガジン「フル〜ツデイズ」にも書いてありますのでお時間ある方はこちらもお読みになってね。▶ http://evajam.nihirugyubook.but.jp/?month=201304

せっかく小田原まで行くんだからと、貧乏性のワタシは箱根の温泉も抱き合せにした2泊3日の時間をとったわ。
日曜日のエバジャム工房販売の営業を早じまいして、まずは箱根入り。箱根のお話しはエバジャムのブログへ書いてますのでお時間あれば読んでみて下さいませ。▶ http://blogs.dion.ne.jp/evajam/archives/11166145.html

それでね、小田原ですよ。
小田原ね、良かったんです。

東京から見ると小田原は、おしゃれタウン横浜(イメージ)を超えて、海辺のさわやかエリア湘南(イメージ)を超えて、その隣りに位置します。
小田原は湘南の隣りに地味ぃ〜に、熱海や箱根の玄関口として(だけ…)存在してる(ように見える)んです。

そう、地味なのよね。
でも良かったんです、小田原。




小田原を訪れたその日は午前中から強い陽射しの良いお天気で、 じんわり汗ばむほどでした。(4月です。)
8時半に小田原駅前にて待ち合せたアリサカさんの車に乗せてもらい、いざ小田原の山の畑を目指してレッツ・ゴー!
レッツ・ゴー!なんて、初対面の人とそんな気軽な?
はい、そんな気軽な感じで。名刺交換などもなく挨拶もそこそこに。
短い時間だどんどん使え〜ってなもので車に乗り込んだワタシ達は道を急いだのでした。

7年ものあいだ声だけしか聞いていなかったアリサカさんの印象は、想像よりずっと若々しく(36歳)服装はさっきまで作業中だったのかしら〜?と想像するようなごくラフなもので、そのせいか打ち解けやすく、車内に落ち着くやいなやワタシは質問攻めにしちゃったわ。

キウイや玉ねぎ、青梅にプラムにブルーベリー、レモンも送ってもらっているのですが、エバジャムが注文する作物以外にも多くの作物を扱うジョイファーム小田原は小田原市内(一部静岡県)の100以上の農家さんを統括して、有機栽培を実践し収穫した作物を大手小売業者に卸す会社でした。
会社って聞くと従業員が何十人といるのかと思うけど、驚いたことにたくさんの農家さんを束ねる会社の従業員がアリサカさんを含めてたったの5人(うち2人がパートさん)だそう。

エバジャム担当のアリサカさんのポジションは、作物の生育状況を把握して、いつどこへどれだけ出荷するかの指示を出すこと。指示出しにともなって書類作成もあるそう。
作物の生育状況〜出荷支持という流れには農家さんとのコミュニケイションが必須なのでしょう、アリサカさんは小田原(と静岡)に点在する農家さんを訪ねるために1日の大半を車移動に費やすそう。
そしてそのポジションにいるのはなんとアリサカさん1人だけだというから、それはそれは大変な仕事量と想像するわ。
忙しさのあまりお昼をとりのがすことも多いんですって。

そりゃあ、ワタシが注文のために電話したってつかまらないことも多いでしょうし折り返しの電話がないこともありましょう。
アリサカさんのお仕事を聞いて、お忙しい中の貴重な時間を、この日はエバジャム農地見学のために割いてくれているかと思うと、なんともありがたいものよ。

ところでどんなとこが小田原は良かったかというと、ですわ。
小田原駅に電車が入ると向こうの方に城(復元)がどどーん!とそびえるのが見えるの。
まずそれにびっくり!おもしろ〜い。
そりゃ、京都や奈良や城下町にお住みの方だと大きな瓦ぶきの屋根をご覧になることもありましょうけど、武蔵野の住宅街じゃあそびえる城などを目にすることは、異国へのトリップ同然でございます。次元が違うの。

城は眺めるだけですけどね。
城下町はスルーしてアリサカさんの軽自動車(バン)でワタシ達は農地を目指せば、小田原は、駅周辺から少し遠ざかればすぐに海が見えることに、感動。
そして海と民家を挟んですぐに山に入れることに、感動。
海と山ですもん、良い!




目の前が海という、1軒の農家さんの作業場を併設するミカン倉庫にまず寄ってもらうと、あるじは不在のよう。しかしアリサカさんはひるむ様子もなくあるじらしき方に電話を入れて「ちょっと倉庫を見せてもらいま〜す。」とだけ言って切ってたわ。
貯蔵と追熟のために使う倉庫をのぞいたり、コンテナに入っているB級品かそれ以下の等級としてはじかれた小粒なミカンを「これはもう捨てちゃうんだろうな〜。」などと言いながらアリサカさんは手にとってむき始めたから、ワタシも〜っとつまませていただいたわ。
小さいけれど、どれもおいしいったらないの。




そこからアリサカさんの車はさらに山に入ります。
山は色んな木々が新緑をきらめかせて、良い香りがしたわ。東京の青梅あたりの山じゃあスギやヒノキ林が多く、山の色が深い針葉樹色に一色だったりするけれど、小田原の山は林に色んな緑があって好みのタイプの山よ。
4月の半ばにかろうじて桜は花びらを残している程度だけど、元気な黄色の山吹や、段々畑の石垣には可憐なヒナギクやスミレがはり付いて咲き誇ってるし、民家のツツジや芝桜も鮮やかだったわ。
山には手がまわらず荒れた部分もあるにはあったけど木々の種類の多さと民家の庭木や花壇の花々がほどよくミックスした景色は、ワタシには夢のような景色だったわ。
しかも、ふりかえれば、海〜!




辺りは静かだけど、天気のよいその日は、太陽は海を反射してさらに強くギラギラと斜面のミカンの葉を光らせて、活力にあふれてる。
山道をどんどんあがって行けばつぎつぎ目に入ってくるたわわに実る甘夏、ネーブル、ニューサマーオレンジ、バレンシアオレンジにキンカンにレモン。そしてそのときが満開のブルーベリーの花。




「ああ、ここは南フランス?」

そんなつぶやきにアリサカさんは「ハハハ…、子供と年寄りだけですけどね〜。」ですって。
小田原もやっぱり人口流出に悩む地方都市ということみたい。




その後もアリサカさんのものすごいドライビングテクで、軽バン1台がやっと通れるほどしかない山の農道をクイックイッと進んで農地をまわってくださったわ。
ところがその日はいつもアリサカさんが訪ねると作業をしているはずの農家さんたちがみなご不在で、ワタシ達は所有者からの説明はいただけなかったの。
それでも勝手知ったる他人の畑とばかりに、アリサカさんの説明はさまざまに通じていたから、それでもOKよ。

農地は山の斜面いっぱいに広がっていてね、その広大な土地に持ち主が何人かいることもあって、どこまでがそれぞれの農家さんの土地なのか分からなくなっちゃいそう。
でもね、よおく見ていると、なんとなくこっちからはお花が植えてあって可愛いミカン畑。こっちからは草が茂ってワイルドね、なんて差を発見できるから、農地も人によって様々なのよ。
そんなことをしゃべっているとアリサカさんは「ここン家は奥さんが花好きだから〜」って教えてくれるの。さすが、それぞれの農家さんをよく知ってらっしゃるのね。

海に反射して輝く、スペインにしかないと思っていたたわわのバレンシアオレンジ、満開のブルーベリーの花、レモンの花、初めてのものをたくさん見られてどれも心に残る景色ばかりだったけど、とくに印象的だったのがエバジャムのジャムにあまり関係のないビワの林ね。
ビワは、ジャムにするには味わいが淡いし、しかもわりと値段が高いから手の届かない果物で、アリサカさんにビワ畑に連れてってもらっても内心は「ふうん、ビワか。」程度だったの。
でもね、広がるビワ畑には農家さんが自分で這わせた小さなトロッコの線路がはり巡らされてて、そのトロッコを使って収穫や剪定をするんですよと説明されると、つい興味がわいちゃう。
そのお手製トロッコがなんとも良く出来てるのと、すごい工夫とその手間にため息が出ちゃうわ。
「このトロッコにいくらかかったんだろう…。収益あげるの大変だろうに。」とつぶやくアリサカさんは続けて「TPPなんかに参加したら、農家はみんなやめちゃうよ〜。」って言いました。
困るわ、ただでさえ”農家は食えない”って後継者問題に国産果物を材料にするワタシはひそかに気持ちがふるえるっていうのに、さらにわざわざ波紋を起こすようなことにならないかしら、TPP。



うぐぐ…と胸をつまらせてると、ジャムにはならないものとチラ見だったビワ畑が黒々と迫って来ます。
そう、本当にビワ畑は黒々と濃い緑色の葉をムキムキと広げ、畑の中は真っ暗。話しを続けるアリサカさん達を置いて、その畑の中に「ちょっと失礼」と入ってみたの。
なんなのかしら、あの感じ。
ビワの林の中はすぐ横でTPPについて話す2人の声を遮断してシーンと静まりかえってるの。外の2人はいないかのようよ。
空からの光は生い茂る枝に葉に遮られて暗い地面には雑草もはえないのかしら、それともきちんと草刈りされてるせいなのかしら、しっとりした土がやっぱり黒々と広がっていたわ。
ハンモックかビーチベッドでも広げてだらんとするか、瞑想でもしたら上手にできそうな空気なの。
超有名パワースポット(伊勢神宮とか)なんか行くと頭が痛くなっちゃったりする邪悪なワタシですが、ビワ畑にはどっしりしたエネルギーを感じてすごく気持ちよかったわ。
なんとなく、頭に浮かぶイメージは”太古”なの。
ワタシの妄想果物学的には、ビワは太古からほとんど進化せずに今ある植物なんじゃないかと想像するわ。アンモナイトみたいに。
「ビワすごい、ビワすごい!」って言いながら畑を後にして、車に乗り込みワタシ達は次の農地に向かったのでした。

いくつもの農地と何軒かの農家さんをまわってもらった帰り道は調子にのってアリサカさんのプライベートを突っ込んでみたわ〜。
結婚して3年のアリサカさんには大手パン屋さんで勤める奥様がいらっしゃるの。
毎晩11〜12時に帰宅するというアリサカさんへ、「奥さんからクレームこないんですか?」って聞くと、朝の早いパン屋勤めの奥さんは帰宅の時間にはすでに寝ていて、ほとんどすれ違いだからクレームもこないんですって。
あらら…。
だけどそんな2人には、パン屋さんを併設した観光農園(お客さんが摘取りできる農園ね)をやるって夢があるんですって。
良いわ〜、夢があるって。
「アリサカさんなら、出来そ〜!」なんて軽く相づち打っちゃったけど、きっと出来ると思うんだわ。ジョイファーム小田原でのハードワークの7年間を思えば、農業の難しさも乗越えられそう。

ああ、だけどアリサカ夫妻の夢が叶ったら、ジョイファーム小田原にエバジャム担当がいなくなっちゃう…。イヤだ、急にさびしくなっちゃう。
末永く、エバジャムとアリサカさんの関係が続きますようにと願うのは、自分勝手かしら。




山と海に囲まれて、古くからの農家さん(鎌倉時代から続くっていう農家さんにも会えたの!)に守られた静かな小田原は、駅周辺から小田原城にかけては繁華な城下町の一面もあって買い物するのに不便はなさそう。これは住むには良いのかも。
それに箱根で降る雪も小田原は避けていくんですって。暖かいのね。温暖な気候はミカンにも良いし、ワタシも望むトコロよ。
帰ってからすぐに物件情報サイトをチェックしたくらい、気になる小田原。
小田原についてなにかご存知の方は、ぜひ声をかけて欲しいわ。
よろしくね。












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プロフィール

 
宇佐美エバ亜希子
うさみエバあきこ
ジャム職人
埼玉県上尾市出身
季節を追った国産果物や野菜のジャムを作ります。 エバジャムを召し上がれ!

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